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悲運の名馬~人が馬を愛すように、馬も人を愛している~

競馬はギャンブル色が強いが、一生懸命走っている馬にスポットを当てると、その1頭1頭の背景には数多くの支える人たちが存在する。手塩にかけて優駿馬に成長させていく動物。しかし予期せぬ突然の死が訪れることも少なくない。好きな馬の死、レースを共に戦う騎手とのエピソード・・・人と馬のドラマを振り返ってみた。
馬キュレ

後藤騎手と歩んだ2年間 シゲルスダチ

シゲルスダチに騎乗した後藤騎手は2012年NHKマイルカップで落馬し、長期戦線離脱となった。
inyofu シゲルスダチといえば2012年のNHKマイルCで落馬した後藤浩輝騎手のそばを離れようとしない姿に競馬ファンの共感を呼び宝塚記念や有馬記念のファン投票で100位以内に入るほどの人気を集めたことで有名です。
2013年10月に復帰した後藤騎手を再び背に、2013年奥多摩Sに挑み、結果は残念ながら9着であったが、人馬ともにターフを駆け抜ける姿はファンを魅了した。しかしこの1年後の奥多摩Sに悲劇が起きてしまう。

復帰目前の後藤騎手の目の前で天へ

2014年11月9日東京競馬場。22日にケガから復帰予定の後藤騎手はこの日ラジオ番組の出演で東京競馬場へ。そしてシゲルスダチは前年後藤騎手とのコンビで挑んだ奥多摩Sに再び出走してきた。後藤騎手も見守る中のレースであったが、それが最後のレースとなってしまった。
inyofu 後藤浩輝騎手「でも彼は最後まで偉かった。脚がブラブラになっても、『もう2度とひっくり返らないぞ、ジョッキーを落とさないぞ』と、必死に最後まで走りぬいてくれました。本当に強い馬でした。どうか皆さん、シゲルスダチを褒めてあげてください。こんな馬がいたことを覚えていてあげてください。ありがとうスダチ。安らかに…」
復帰を目前としていた後藤騎手を前に、シゲルスダチはターフを去っていった。2年前後藤騎手を振り落としても、そばから離れず寄り添ったこと、そして今回は騎手を振り落とさないぞ、とばかりに折れた脚で懸命にゴールへ駆け抜けたこと。確かにそこに人と馬との心が通じた何かがあったのだろう。11月22日、後藤騎手はスダチの思いも胸にターフへ帰って来てくれるだろう。

サイレンススズカ サラブレッドの限界

4歳で6連勝の本格化を遂げ、飛ばしに飛ばす大逃げという戦法で多くのファンを魅了したサイレンススズカ。しかし続く1998年天皇賞秋、1.2倍の断然人気も悪夢。
1000mの通過タイムは57.4秒という平均よりも3秒近く速いタイムで通過したが、それがサラブレッドという生き物の限界だったのか、最後の直線を迎えることなく生涯最後のレースを終えた。天才武豊騎手もこのレースには未練が残ったようだ。
inyofu 「なかなかいない。あのトップスピードで、あれだけの骨折をして転倒しない馬は。僕を守ってくれたのかなと思いましたね。今でもすごくよく、サイレンススズカのことを思い出すんですよ。せめてあと数百メートル、走らせてやりたかったな。うん、すごい残念。今でも悔しいですもん」

ライバル陣営もその死を悼む

天皇賞秋の前の毎日王冠で破ったエルコンドルパサーがその後ジャパンカップを制覇し、日本一の座についた。しかしそこで勝利騎手の蛯名騎手はインタビューに対し、スズカに対する思いを述べた。
inyofu 「ウチの馬も、サイレンススズカの影さえ踏ませてもらえなかったんですよね。どこまで強い馬だったのか。―本当に残念なことをしました」
競馬界を代表する武豊騎手、蛯名正義騎手がその死を悼んだ。そしてスズカが影をも踏ませぬ走りで破ったエルコンドルパサーとグラスワンダーがその後大活躍したことにより、もしスズカが天皇賞であと数百メートル走れていたらどんな走りをしていたのか、という夢は誰しもが描きたくなる。そんなスズカは自分の脚の痛みとは引き換えに、武豊騎手を振り落とさないように支えターフを去っていった。極端にさみしがりやだったスズカを思いやり、最後に運ぶ時もスズカがさみしがるから、ともう一頭仲間の馬を乗せて一緒に運んであげたと言われている。

GⅠを制す活躍も行き場がなく走ったダンツフレーム

皐月賞では無敗馬アグネスタキオンと、後のダービー馬ジャングルポケットの間に割って入り2着したダンツフレーム。その後は2002年宝塚記念で念願のGⅠを制し種牡馬入りを果たす。

種牡馬入りも異例の現役復帰

種牡馬入りを果たすも、種付する申し込みがなくその道が早くも閉ざされる。するとそこから地方の荒尾競馬で現役復帰いう異例の事態となった。しかしその後活躍をすることができず二度目の引退。次は乗馬としての行き場が見つかった矢先、病で死亡した。走るため、そして子孫を残すためだけに生まれてくるサラブレッドであるがゆえに、行き場を失う馬は多い。それがこうしたGⅠ馬であっても難しいのが現状のようだ。現在はNPO法人の引退馬協会なども設立されていて今後の動向に注目だ。
認定NPO法人引退馬協会

サラブレッドは現代社会において、いわゆる経済動物という立ち位置であり、ひたすら速く走ることだけを追い求められ生を受ける。それゆえ負荷がかかりすぎると故障を発症してしまう。しかしそれがただの経済動物で終わらない理由は、そこに馬と人の心のつながりがあるからだろう。命あるものは必ず天へ召されるが、それがわかっていてもなのか、時に馬は自分の身を投げ打ってでも人に尽くす。それがファンの心に焼き付き、競馬がただのギャンブルではないということを悟らされる。かつてJRAのCMにも起用されたいたフレーズでもあるが、人が馬を愛すように、馬も人を愛しているのかもしれない。

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