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コラム

「覆面馬主の真実」【第11話】~リアルタイム進行型・競馬狂小説~

馬キュレ
馬の蹄が掻き上げた砂塵が、湿り気を含んだどんよりとした空気を更に重くしている。歓声とため息とが入り交じって渦を巻く大井競馬場の観客席に背を向けて、一人の男が立ち尽くしている。
男は、もうずいぶん前にレースが終わっているのに、微動だにしない。よく見ると、背中に哀しみが滲んでいて、小刻みに震えているようにも見える。

我々は、もう長いこと彼の背中を見続けていて、いよいよ我慢が出来なくなってきた。

1号「お~~~~い、6号!」
6号「・・・・・」

6号のリベンジ予想に丸乗りして大井競馬場に出陣した覆面馬主軍団、馬券の結果というより、6号の様子が気になって仕方がない。

1号「どうだった?取ったか2号。」
2号「くうううう、パーティメーカーから広めに馬連買ってたんですが、抜けました。悔しい。複勝だけですよ。パーティの。」
1号「オレも。単複で複勝厚めに行って良かったな。5倍以上ついてるぞ。」
2号「え~~~、そんな付くんすか?複勝だけで良かったですね。」

そんな会話がひっそりとされてたのは、馬券が確定した後である。それでも6号は、ゴール板前に立ち尽くしている。どうしたんだろ?ハズしたのかな・・・?それとも、予想で書いた買い目に加えて買った馬券が炸裂して震えてるのかな・・?

1号「おい、6号、メシでも行こうぜ。」
6号「・・・・・」
1号「大丈夫か?6号!」
6号「あ、は、はい。何だか、的場さんの必死で追う姿見てたら感動しすぎっちゃって。もう、感無量ですよ。」
1号「だよな、的場さんも残念だったな。今年何回目の挑戦だったんだっけ?」
6号「今年34回目の挑戦で、今回で9回目の2着です。」
1号「そっかそっか。感動の栄冠は、来年にとっておこうな。的場さんは鉄人だから、来年も挑戦するに違いないし。」
6号「でももう56歳ですからね。ダービー勝って引退させてあげたいですよ。」
2号「でさ、おまえ、馬券どうしたんだ?」
6号「え?馬券?ああ、そうだ、当たってますよ。最期に的場さんから馬連の総流しを3000円ずつ買ったんで。それは当たりです。」
1号「お!そりゃ良かったな。230倍くらいついたぞ。」
6号「ま、どっちでもいいっす。馬券は。」

というわけで、今年の大井のダービーは、6号の仇討ち予想と的場さんのダービー初栄冠への挑戦とで、かなり盛り上がった訳だが、結果は惜しい2着だった。まあ、よく頑張った競馬だった。直線最期まで追う56歳の的場さんの姿は、まさに鬼気迫る迫力だった。若い騎手たちにも見習ってほしい。絶対にあきらめず追う姿。これこそが人の心を打つ。

さて、そんなダービー残念会では、今年から始まる2歳新馬戦の話題となった。
メンバーは、1号、2号、4号、6号、7号。

1号「おい、小鳥!注文とってくれ。」
7号「ちょっと、兄貴、オレまだ使いっぱじゃないからね。」
1号「あれ?そうだっけ?小鳥ってなんだっけ?」
7号「あんたが付けたネーミングじゃねえかよ。オレしらねえよ。」
1号「おい、4号、注文とって。あれ、おまえも何だか元気ねえな。どした?」
4号「いや、今日は感動しちゃってるんすよ。」
1号「あ、的場さんか?」
4号「それもあるんすけど、自分が名前付けた馬が勝ったんすよ。大井で。」
1号「ああ、〇〇〇〇〇〇だな。それはめでたいな。」
2号「それより、皆さん、我々覆面馬主軍団が参加して、うまキュレさんの月間PVが、180万突破しました。この勢いで、安田記念も頑張りましょう!」
1号「でさ、2号、おまえ、2歳の新種牡馬けっこういるだろ?どれが良さそうなのか聞いてる?」
2号「ヴィクトワールピサがいいらしいっすよ、我々が持ってるのも今年デビューですが。」
1号「オレ、馬券は、ダノンシャンテイがいいんじゃないかと見てるな。スピードあるし、1200m芝とか絶対合うだろ。」
2号「確かにそうっすね。」

さあ、今週から始まる2歳の新馬戦。これってまさに、甲子園の地方予選みたいな訳だが、なかには未来のG1馬が隠れてる。凄い逸材に出会える楽しみもあるしな。と、そこへ、イケメン5号からの着信。

5号「あのお、今日は行けなくて残念でした。で、皆さん、今年の競りでいくらまで乗ってくれるのか、来週くらいまでに決めといてくださいね。」
1号「ディープのオトコ馬買うんだよな?」
5号「はい。ノーザンファームのセレクトと決めてます。」
1号「マジか・・・。」

これから、競りのシーズンも到来。覆面馬主軍団は、どんな馬を仕入れるのか?
しかし、あの競り場で、5号が無尽蔵にキャッシュリッチな相手に競り負けて、しばし呆然と立ち尽くしている姿が、既にうっすら見えている。楽しみだな、セレクトセールが。


(続く)

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