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コラム

「覆面馬主の真実」【第24話】~リアルタイム進行型・競馬狂小説~

馬キュレ
第63回ダービー。1996年6月2日。あの日、オレは独り、東京競馬場にいた。朝から電車に揺られ、新聞を握りしめた群衆にもみくちゃにされていた。身体はずいぶん揺らされたが、このダービーの予想だけは揺らがなかった。
馬主の資格をとる6年も前のことである。
天才武豊が手綱をとるダンスインザダークをしこたま買う!何日も前からそう決めていた。武豊がダービージョッキーの栄冠に輝く瞬間を待つばかりだった。

馬券は、ダンスインザダークの単勝と複勝。皐月賞馬イシノサンデーと、ロイヤルタッチを相手にした馬連2点。これに有り金をブチ込む予定だった。

超満員のパドックへいくと、ダンスインザダークの雄々しい馬体が初夏の陽光を全身に受け、光り輝いていた。まず負けないだろう。予想は確信に変わっていた。
相手は、どの馬だろうか?
一頭一頭、目を凝らす。と、素晴らしく悠然とした雰囲気の馬が、目についた。フサイチコンコルド?ああ、フサイチのもう一頭の方か。それにしても、素晴らしい馬体だなぁ。馬柱を見ると、あれ?この馬まだこれが3戦目か。ないよな、まさか。
うーん、でも2着はあるかもしれないか。

結局、ダンスインザダークの単複とフサイチコンコルドへの買い目を加えて、馬連三点を買い、おしくらまんじゅうのゴール板前へ。

第63回ダービーのファンファーレが高らかに鳴った。
武〜〜!という声援と共にレースは、直線の攻防へ。ダンスインザダークが抜け出し、勝ったかと思ったら、凄い脚で一頭飛んできた。なんだ?あの馬?
え〜〜!フサイチコンコルドだ!

この日、フサイチコンコルドと藤田伸二は、人々の心に深く刻み込まれる伝説をつくった。

以前、競馬の師匠が、口ぐせのように言っていた言葉を思い出した。

「走る馬は、どこか雰囲気が違うんだ。」

オレがパドックで感じたフサイチコンコルドの何とも言えない雰囲気、静かな迫力、あれがそうなのか。今の言葉で言えば、オーラが違うのだ。

不思議な直感を信じて、買い目を足して大正解。単勝ははずしたが、ダンスインザダークとフサイチコンコルドの馬連は、3420円もつき、ダンスインザダークの複勝も150円もついて、結果、馬券でも勝つことができた。

そして、あの日、デビュー6年目にしてダービージョッキーの栄冠を手にした藤田伸二という若き騎手の豪腕に心から敬服したのだった。

あれから19年、本日、藤田伸二は密やかに引退した。騎手生活25年間、名騎乗は数え切れない。タケノベルベット、シルクジャスティス、ローレルゲレイロ、トランセンド。いつもいつも、名馬誕生の立役者だった。

平成の競馬を、劇的に面白くしてくれた最高の騎手、藤田伸二さん、ありがとう!そして、お疲れ様でした!

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