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コラム

「覆面馬主の真実」【第26話】~リアルタイム進行型・競馬狂小説~

馬キュレ
同一重賞の三連覇は、本当に難しいことなんだな。
今年の凱旋門賞のトレヴを観てそう思った。

確かに、トレヴは出来も抜群だったし、いつものような行き脚だったけど、内が止まらなかったな。デットーリは、やはり天才的に上手い。しかも、イギリスダービー馬が、斤量56キロ。対するトレヴは、58キロ。この差がひっくり返せなかった。

競走馬は、サイボーグではない。彼らなりに、2歳から3,4歳と進化し、どこかでピークを打ち衰退していく。意外と、旬は短いようにも思う。

今年はみんなで(7号、2号ほか)持ってる2歳馬の一頭が、クラシックに乗れるか乗れないかのあたりにいる。既に一つ勝ってるので、もうひとつ勝てばたいていのレースには出られる。が、重賞ともなると、相手はべらぼうに強い。

馬主は、誰でもそうだが、二つの側面を持っている。

皐月賞、ダービーと続くクラシックに自分の馬を出走させたい!そんな夢を見続けるロマンチスト的側面、と、相手が弱いから、ここは2着賞金でも十分美味しいだろう、こっちで堅くいこう!という感じのリアリスト的側面。

自分の馬の無限の可能性に賭けるか、ひいき目に見ずに、現実を直視するか・・。

共有だと、馬主同士で意見が分かれることも多い。

去年の3歳馬で、5人で持ってるディープ産駒がいたのだが、この馬の使い方をめぐって、かなり意見が割れた。母系が短距離だから、NHKマイルカップを狙っていった方がいいのでは?という人と、あれだけ馬体が雄大なんだから、距離は長い方がいい、という人と。
結果、クラシックを使ったが、やはり通用しなかった。

が、素敵な夢を見ることが出来た。
ま、それでいいじゃないか。
とも思う。

競馬とともに暮らしていると、どうも2歳クラシックの歩みが時間の流れの中心にくる。でも、最近、菊花賞は、何だか軽くなったな。

昔は、もっとステイヤーのブランド価値が高かったから、菊花賞が3冠目で、これを勝つのが本当に強い馬!って認識がみんなにあった。
が、近年、競馬のスピード化が進み、長距離のレースも減り、めっきりステイヤーは減ったように思う。

毎年、菊花賞を迎えると、亡き父のことを思い出す。

1990年11月4日、その日は父の告別式の日だった。京都では、菊花賞が行われていた。前の晩のお通夜に、著名なアナウンサーの方が東京からいらしてくれて、わざわざ競馬新聞を買ってきてくれた。当時は、田舎では競馬新聞が買えなかった。

喪主である私に新聞をそっと手渡すと、その方は、こういった。

「明日は、白黒ですよ、きっと。」
「ですね。1-2の枠連を一点だけ、お願いしてもいいですか?」
「わかった。買っといてあげるよ。」

1枠1番に、当時好きだったホワイトストーンが、2枠2番に、大好きだったメジロマックイーンが入っていた。
1番人気は、メジロライアンで、この馬が、大外18番枠。
メジロマックイーンは、4番人気だった。

父の葬儀を終えたころ、電話が鳴った。

「ほら、やっぱり弔い馬券だったね。1点で当たったよ。京都からの香典だね。」

結果は、メジロマックイーンが1着、ホワイトストーンが2着。
枠連の1-2は、1240円もついた。

競馬が人生の比喩なのでなく、人生が競馬の比喩なのだよ、と寺山修司は言っていたが、オレは、最近こう思う。

競馬は、人生の付箋だ、いや、人生は、競馬の付箋なのか?

その時々の、競馬のあり方、自分のあり方が、交錯して一冊の長い物語を綴った本のようだ。その1ページ1ページに、ドラマティックな付箋が貼られている。

あれから、25年、菊花賞のたびに、白黒の枠連を1点だけ買うようにしている。
1990年以降は、ずっとハズレていたが、2009年、スリーロールスとフォゲッタブルが爆走して、1-2の枠連は、5430円もつけた。
そして昨年の菊花賞、トーホウジャッカルとサウンズオブアースで、枠連1-2、これまた、2310円もつけた。

トータルすると、25年に及ぶ、枠連1-2の1点買いは、おそろしく勝っているな(笑)

今年、義理の父が亡くなった事もあり、今年の菊花賞も弔い馬券を1点だけ買おうと思う!

競馬には色々な楽しみ方がある。
そして、そこに心の琴線に触れるいくつもの想い出が、付箋のように貼られていく。

さあ、今週の菊花賞、2枠にキタサンブラックが入ってくれた。
今年も、枠連1-2の弔い馬券が炸裂しそうだな。

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