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コラム

「覆面馬主の真実」【第55話】~リアルタイム進行型・競馬狂小説~

覆面馬主の真実
北の大地には、冬将軍の最後の咆哮ともいうべき春の嵐が、ゴーゴーと吹き荒れていた。その合い間を縫って、馬体の目利き達人Oさんと、調教師のS先生と3人、頬を突き刺す寒風に耐えながら、寒さに縮こまるサラブレッドたちをじっと見つめていた。

そんな苦境にわざわざ歩を進めるのには、訳があった。これから始まる競り(オークション)前に良い1歳馬を庭先で先に買ってしまいたいというイヤラシイ欲望からである。

日高の奥へ、奥へ、雪の残る牧場を巡って歩く。

冬将軍が堪えるのは、人だけではない。
馬たちも、精一杯冬毛を伸ばし、耐えていた。

この時期の1歳馬は、その馬体を見極めるのが本当に困難だ。
ぼうぼうと伸びた冬毛の下に、まだまだ未発達の筋肉、どの馬も、よく見えない。

春が来て暖かくなると、1歳馬たちは、昼夜放牧で心身を鍛えられ、馬体はぐんぐん大きくなる。
まだ小さな身体が、どのように成長するのだろうか?どこまで上に伸びるのか?どこまで幅が出るのか?
骨格から想像するしかない。

設計図を見て、まだ造られていない建物を想像するような、いや、それ以上の難しさがある。

イマジネーションを働かせ、2歳、3歳になった姿を予見する。

皆、頭の中で馬たちの完成予想図をめいめいに思い描く。
が、描いている図は、みんな全然違うはずなのだ。

馬探しの旅では、目当てにしていった馬よりも、必ず、心惹かれる馬が現れる。
それが大抵は、あまり成績が出ていないマイナーな種牡馬の仔だから悩まされるのだ。
馬体は良いが、ホントに走るのだろうか?
アスリートとしての能力は備わるのだろうか?

牧場巡りには、宝探しのようなワクワク感があるというが、単なる宝探しでは決してない。
厳密に言えば、買うと決めた時点では、全ての馬が宝であるよう見える。
いや、宝とおぼしきモノに見える。

しかし、これ、ホントにお宝か?ガラクタなんじゃないか?という疑心暗鬼は、どこまでもつきまとってくる。

そのモヤモヤと晴れない感覚が、好きだ。

そして、サラブレッドたちは、時にお宝と思わせ、また時にガラクタと思わせ、人の心をもてあそぶ。
成長していく段階で、これほど一喜一憂する事ってあるのだろうか?
あ~もうダメか・・、え?そんなに成長したのか・・・。
こうした驚きの繰り返しだ。

安心と心配がない交ぜになった状態のまま、新馬戦を迎える。

さあ、オレが見込んだお宝は、本当にお宝だったのか・・・?
試される日がやってくる。
が、仮にここで大負けしてガラクタか、と思わせたのにもかかわらず、次走に爆走なんて事もあるから、結局いつまでたっても分からないのだ。

何事もスッキリしないと嫌な性格の人は、馬主には向かないのかもしれないな。

安心出来ない日々を楽しめる人が、馬主には向いているのだと思う。


続く。



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