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コラム

「覆面馬主の真実」【第61話】~リアルタイム進行型・競馬狂小説~

覆面馬主の真実
「オークスの想い出~2~」

その日、29歳だったオレは一人東京競馬場にいた。
この頃からだろうか・・。馬券を大きく張るようになったのは・・。

オレの20代は、バブル景気真っ盛りの時代で、仕事も順調、金回りも相当良くなっていた。
仕事が忙しいオレの唯一の息抜きは、競馬だった。
まだ馬主になる10年くらい前の事である。

1991年5月、この当時、日本社会には暗雲が立ちこめていた。

日経平均株価が、1989年の大納会(12月29日)に終値で3万8915円を付けた。これがピークだった。翌年から株価は、暴落に転じ、その後、湾岸危機や原油高や公定歩合の急激な引き上げなどにより、株価は、みるみる下がり、1990年10月1日には2万円を割れたのだった。わずか9か月で、高値から、半値近い水準にまで暴落した。
この当時、オレは株を一切やってなかったが、近くにいた相場好きの先輩たちが、全員へこんでいたのをよく憶えている。

そんな1991年5月、また、オークスの日がやってきた。

この頃、オレは、血統というものの魅力に取り憑かれ始めていた。
外から見ても全く分からないサラブレッドの中身を血統から推理していくのが、楽しみだった。
それは、どんな推理小説より深く難解なものだからだ。

5代血統表をみて、そこに登場する過去の名馬や名牝たちの事を調べるのも、ネットがまだ発達していない時代、大変な苦労だった。
たいして知識もないのに、いっちょ前に高弁を垂れたりもしていた。

このオークスの日、オレは、どうしても買いたい馬がいた。

その馬の名は、イソノルーブルだ。
5連勝で臨んだ桜花賞で、シスタートウショウに敗れ、5着。
当時、イソノルーブルは、距離が持たないからな、オークスは無理だろうな、という前評判だった。
逆に、父トウショウボーイのシスタートウショウは、距離が伸びて尚良し、勝つのはこの馬だと言われていた。

オレは、この2頭の血統表を眺めながら、本当にイソノルーブルは距離持たないんだろうか?と思い始めていた。
父ラシアンルーブル、は、ニジンスキーの仔で、まさにタフな血で知られる血脈だ。
そして、母父のテスコボーイは、お馴染みの偉大な父で、トウショウボーイ、キタノカチドキ、サクラユタカオーらを輩出している。
イソノルーブルの血統表を眺めていて、むしろ距離が長い方がいいんじゃなかろうか!
と直感したのだった。

対して、1番人気だったシスタートウショウは、無敗の桜花賞馬で、ここまで4連勝。オークスも勝つだろうと言われ、単勝オッズは、2,1倍だった。
が、このシスタートウショウ、母の父がダンディルートで、母系は、スタミナ系というよりむしろスピード系だな、と思っていた。
距離が持たない危険性があるのは、むしろこっちではないのか・・。

オークスの枠順が発表される前から、オレは、もう買う馬券を決めていた。

イソノルーブルの単勝、相手は、シスタートウショウか、スカーレットブーケ。
枠連は、この2点。もし相手が同枠に入れば、1点ですむな、と思っていた。

ところが、枠順が発表されて、オレは衝撃を受けたのだった。

イソノルーブルは、大外枠8枠20番。

う、う、うそだろ・・・。

馬が行く気満々過ぎて、ハナを切ってしまう、とにかく猛ダッシュしてしまう、イソノルーブルはそんな馬だったから、ビュンビュン飛ばしすぎて長い直線でバテてしまうのではないか・・。
そんな不安がよぎる大外枠だった。

そして迎えたオークス当日、オレは、迷いに迷っていた。
内枠に入ってくれたら、迷わず買えたのかもしれない。
しかし、競馬の神様は、そんなに甘くはなかった。

レースが近づいてくると、オッズが現れた。
イソノルーブルの単勝、13倍。シスタートウショウの単勝2倍。
スカーレットブーケの単勝、9倍。

当時、三連複や、ワイド、馬連もなかったから、馬券は、単複か枠連、だからとにかくドカンと単勝に行くのが常だった。

この日競馬場に来るまでは、勝つのはイソノルーブル、と心に決めていたのに、いつの間にか、勝つのは、この3頭のどれかだろう、という博奕打ちとしては最低な結論に達していた。

この3頭の単勝と枠連3点を買えば、間違いなく当たる。
が、シスタートウショウの単勝は、2倍だから、均等に買ったらガミってしまう。

そして、イソノルーブルは、逃げて、この2頭に差されるだろう。という結論に達していた。

結局この日オレが買った馬券は、シスタートウショウとスカーレットブーケの単勝を、〇〇万円ずつ。
それと、シスタートウショウがいる7枠からスカーレットブーケのいる6枠の枠連、6-7に〇〇万円、それと、押さえに、イソノルーブルがいる8枠への、7-8を〇万円。

そしていよいよゲートが開いた!

大外枠からオレの予想通り、イソノルーブルが猛ダッシュでハナを切ると、グイグイ逃げた。対して、シスタートウショウは、ほぼ最後方。

よし、読み通りだ!イソノルーブルは、バテるな・・。

が、オレの浅はかな予想は、粉々に砕け散ったのだった。

イソノルーブルは、全くバテず、見事な逃げ切り、シスタートウショウが追い込んで2着!

イソノルーブルの単勝配当は、1210円。
枠連は、700円。

あああああああ。
最初に考えた馬券なら、〇百万円にもなったのに・・・。

結果、単勝はどちらもハズし、押さえの枠連だけが的中。
収支は、ほぼチャラだった。

オレは、自分の移り気な性格を呪った。
あれだけ、血統面から、イソノルーブルの方が距離が向くと確信していたのに。。

バカだ、オレは。

この時、最初の予想をくつがえしたら、まず当たらない、迷ったらまず当たらない、事を知らされたのだった。

が、今も、競馬場に行くと、迷う、そして、考えに考えた珠玉の予想をひるがえし、おかしな馬券を買ってしまう自分がいる。

今更ながら、こう思う。
馬券は、自分との戦いに他ならない。


◆「オークスの想い出~1~」はこちら



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