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コラム

「覆面馬主の真実」【第68話】~リアルタイム進行型・競馬狂小説~

覆面馬主の真実
愛馬をターフに送り出す馬主達にとって最も心躍るレースは・・、実は重賞ではない。

新馬戦である。

そもそも、何故、これだけ科学が発達しているのに、分からないのだろうか?

「どの馬に競走能力があるのか?」って事。

牧場で手塩にかけたスタッフも、馬たちを何十年も見続ける牧場主も、アスリートを育てるプロである調教師も、そして、何より大金をはたいて馬を買う馬主たちも、揃ってこう言う。

「走ると思うんだけど、やってみないと分からない。」

オレもいまだに分からない。
血統が良いとか、馬体の善し悪しとか、気性の善し悪しとか、跳びが大きいとか、闘争心があるとか、そういった事は、うっすら分かるのだが、そうした事が、競争能力を決定づけるかというと、それは、違う。

何故なのだろう・・?
少し考えてみると・・・

馬たちは、牧場で産まれ、昼夜放牧なんかで鍛えられ、育成(トレーニング)施設のある育成牧場に行き、馴致(じゅんち)といって競走馬としての基本を教え込まれ、コースを走りながら、徐々にレースらしきものに向かっていることに気づいていく。

そして、厩舎に入り、美浦か栗東のトレセンで多くの馬たちと一緒に更にスピード走法を学び、ここでようやく「仕上がる」と言われる。

が、馬たちは、この時点で、「一度も長い距離を全力で走った事がない」

つまり、練習では、「あんまり走ってない」のだ。

だから、デビュー戦は、産まれて初めての全力疾走であり、馬たちにとってみたら、とんでもなく大変な出来事なのである。

だから、調教で全然走らない馬が、突然レースで走る、みたいな不可思議な出来事が起きるのである。
瞬発力はあっても心肺機能がダメなら、最後にバテて、歩いてしまうし、逆に、どこまでもバテない馬もいる。

要するに、レースに行ってみないと、「何も分からない」のである。

だから、どんなに調教でダメでも、一縷の期待を胸にレースに駆けつけるのである。
競馬場で目覚める馬も多いからね。

オレの2歳馬も、先日デビューした。
当然、朝一で、駆けつけることになった。

1号「おい、9号、トラックマンの情報どうなんだ?」

9号「それが、あんまり良くない感じでして。1号師匠にそのままお伝えすると、激怒しそうで・・。聞かない方がよろしいかと。」

1号「そんな悪いのか・・。じゃ、なんですぐ使うんだよ。」

9号「さあ?」

そんな話をしながら、9号を連れて、競馬場へ!

9号が聞いてる話とオレが聞いてる話を総合すると、うちらの馬、ここに来るまでにこんな風に言われていたようだ。

「まだ幼稚で、走るって事を分かってない。」
「子供過ぎる。」
「とんでもない大食いで、全然絞れない。脂肪が取れない。」
「全力で走ろうとしない。」
「今まで一度も、気合いが乗ったことない。」
「いつも、ぼ~っとしてる。」

あまりに、酷すぎる・・。
オレは当然、数日前に調教師にこう言っていた。

1号「だったら、きっちり出来るまでレース使うのやめたら。」

調教師「いや、1度レース使えば、ピリッとすると思うんすよね。」

1号「ピリッとするって、よく聞くけどさ、何それ、ピリッとってよく分からんよ。唐辛子じゃねえんだからさ。」

調教師「何ですかね?闘争心とかも含め、馬がやる気出すって意味なんですけどね。」

1号「あ、そう。じゃまあ、勝ち負け以前に一回使ってみようって事か。何だか悲しいな。そんなデビュー戦。」

調教師「すみません・・。やっぱ使いたいんで・・・。」

そんな感じだったから、オレも自信ゼロ状態でパドックにも真っ先に行ってじっくり見た訳だ。確かに言われてる通り、全然気合いもなく、ずっとぼぉ~っとしてるな。ダラダラ歩いてるよ、大丈夫か。
馬体は、とても素晴らしいんだけどな・・。

このパドックを眺めていると、脳みそが掻きむしられてくる。
こいつ、一体全体どんなレースするんだろうか・・・?

このまま、ぼぉ~っとしたまま、ビリを引くかもしれないし、突然走り出して、上位に来るかもしれないし・・、まさに神のみぞ知るとは、こういう事なのだ。

だから、競馬は、面白いのだ。

これだけ科学やデータ解析なんかが進んでいるのに、やってみないと分からないから。

そして、結果は・・・


なんと、あんなにぼぉ~っとしてたのに、スタート出て、しかも逃げた!
ウソだろ??
ゲートも遅くてヤバいって聞いてたのに・・。

結果、直線で差されたが、掲示板には載ったのだった!

やった!
走る気を見せた!
やってみたら、走ったじゃねえか!

1号「良かった~~!結構走るじゃんか。何だよ、みんな酷いことばっかり言ってたのによ。」

9号「これなら、未勝利は楽に勝てますね。良かった!」

競馬は、やってみないと本当に分からない!

だから、馬主の喜びは、天国か地獄か、どちらかの扉が開く「新馬戦」にこそあるのだ!



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